『どうすればよかったか?』
監督 藤野知明 2024年 101分
観了後、この映画のパンフレットを読み茫然とした。
安直に言葉を発せなかった。
それほど、各々の立場での感情と願望が、悲しいほどに一方通行な家族だった。
悲しいほどに一方通行だったから、涙が出てきたのだろう。
母親に言い放った監督の言葉が、胸に突き刺さる。
「『家族』だから、解決できない問題もあるんだよ」
確実に老いていく両親。
背中は曲がり、認知症の症状も顕著になってきた。
監督は、近い将来に起こりうる残された姉との暮らしをリアルに想像していた。
だからこそ、「軟禁されている姉をどうにかしなければ」との想いに駆られ、医者に相談し、姉が受診する機会を虎視眈々と狙ってきた。
障碍者を座敷牢に閉じ込めて、外界との接触を絶つ習慣は、日本に古くからあった。
この両親も、医者と研究者でありながら同様だった。
スティグマを恐れ、統合失調症の娘と正面から向き合えず放置してきた。玄関に南京錠をかけてまで。
誰も悪くはなかった。
誰も人様の家庭をジャッジすることはできない。
物事は、どの角度から誰が見るかによって、善にも悪にもなり得る。
「もしこうだったら」と言うのも、おこがましい。
この作品を世に出したことで、多くの人の心に「家族とは」に続く言葉を、投げかけたのではないか。
1月25日の今日、
小さな家族によって、この世に迎え入れてもらった身として、自分に問うてみたい。
わたしの家族は、「どうすればよかったか?」
これから、「どうしていけばいいか?」
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Upper World
「問題」は飛躍のための必要な苛立ち。