絵本『くまとやまねこ』

今日も「子どもの心を豊かに育てる児童文学」のご紹介をします

前回は、『ゆめたまご』をご紹介しました

今日は『くまとやまねこ』という絵本で、作者は「湯本香樹実(ゆもとかずみ)」さん、絵は酒井駒子さんです

絵本の読み聞かせが子どもに与えるメリット

・親との愛着(=アタッチメント)をつくる

・想像力を育む

・読み書きの練習になる

・知的好奇心をくすぐる

などです

読み聞かせをする親のメリット

・親の自尊心の向上

・親のストレスが減る

「子どもに何を読んであげたらいいかわからないなー」「もうネタがつきたなー」という親御さんは、是非ここで取り上げた作品をお子さんに読んであげてください。

他にも「自分は子ども時代に、児童文学を親に読んでもらったことがないよー」という方は、自分で手にとって読んでいただくか、収録したものを聴いていただいてインナーチャイルドを少しでも癒していただければと思います。(stand.fmで聴けます、趣味なので無料です)

『くまとやまねこ』の作者 湯本香樹実 さんのざっくり解説

・1959(昭和34)年の東京生まれ

・東京音楽大学音楽科作曲専攻卒業

・小説『夏の庭―The Friends―』は1993(平成5)年日本児童文学者協会新人賞、児童文芸新人賞を受賞。同書は映画・舞台化されるとともに世界十ヵ国以上で翻訳され、1997年にボストン・グローブ=ホーン・ブック賞、ミルドレッド・バチェルダー賞に輝いた

・2009年絵本『くまとやまねこ』で講談社出版文化賞受賞

・著書に『ポプラの秋』『春のオルガン』『西日の町』『岸辺の旅』『夜の木の下で』、絵本に『わたしのおじさん』『魔女と森の友だち』などがある

『くまとやまねこ』の内容紹介

「ある朝、くまは泣いていました。仲良しの小鳥が死んでしまったのです。」という言葉で物語はスタートします。

くまは死んだ小鳥を木箱にそっと入れて、どこに行くにもその箱を一緒に持って行きました。

死んでいると分かっていても片時も離れられず、小鳥の死を受け入れることができませんでした。くまの友だちが「その木箱には何が入っているの?」と聞いてきます。ですが、くまがその木箱を開けてなかを見せるとみんな黙ってしまいます。そして決まってみんなこう言うのです。

「小鳥はもう戻ってこないから忘れようよ」と。

くまは「誰も自分の悲しみを分かってくれない…」と感じました。

だから、自分の家の扉に鍵をかけて暫くこもって出てこなくなりました。

しばらくこもった後、久しぶりに窓を開けてくまは外に出ます。そして暫くぶりの外の世界で偶然やまねこと出会います。そこから、くまは小鳥の死から一歩を踏み出していくのです。

第40回 講談社出版文化賞 絵本賞受賞

2009年版 国内絵本「この絵本が好き! 」第1位

第1回 MOE絵本屋さん大賞 第1位

湯本香樹実さんのコメント

この『くまとやまねこ』は、ずいぶん長い時間をかけてできあがった絵本なのですが、できあがった今、時間をかけたかいがあったなあと心から思えるし、この絵本で私が書きたかったことも、やっぱり「時間」なのだな、とあらためて感じています。身近な人が亡くなることも含めて、大事な何かを失うというのは、自分自身の一部が死ぬことと等しい。死んだ自分を抱えている間は、時間が止まってしまったようにも思えるけれど、時間は実はきちんと流れていて、なにもしていないように見える人にも、深い変化をもたらしているのではないでしょうか。この絵本のなかのくまが、悲しみに閉じこもり、でもやがて外に出かけていったように、必ず死んでしまった自分自身の一部も、またよみがえる時がくるんだという、そういう時間というものへの深い信頼と感謝の念が、私にこの小さな物語を書かせてくれたのだと思います。酒井駒子さんの素晴らしい絵によって、くまやことりややまねこや、命あるものすべてに流れる時の一刻一刻が、一頁一頁、このうえなくいとおしいものとして描き留められました。お読みいただけましたら幸いです。

対象年齢

・おそらく小学生(高学年)から

*対象年齢は一般的な指標であり、その作品にお子さんが興味を示したり、兄弟がいて少し対象年齢が上の絵本でも

「その作品に触れる機会を持てた」ということに意味がると思うので、あまり縛られずに自由に作品を読んでいただきたいです

自分なりの考察と感想(内容含む)

わたしがこの絵本を通して感じたことは二つあります。

・落ち込んでいる人に「つらいことは忘れよう」と声をかけることは相手を傷つけることになる

・同じ苦しみを味わった人にしか共感できない

小鳥の死を忘れるように言ったうさぎの発言を受けて、くまは自分の家にこもってしまいます。誰だって悲しんでいるときに「忘れましょう」と言われたら「それができたら苦労しないよ…」となりますね。そして同じ苦しみを味わった人にしか共感はできないでしょう。経験していませんから想像自体ができないのです。傷つかないように自分の行動を制限して安全な場所にいては広がりのない経験にしかならない、だから失敗も含めいろいろな経験をして様々な感情を味わった方がいい。

くまはやまねこと旅をすることになるのですが、この先いつか別れが訪れるかもしれません。大切な人を失う悲しみを再び経験することになるかもしれません。それでも、二匹はお互いに一緒に生きて前に進むことを選びます。くまにとっても新しい一歩であったし、やまねこにとっても新しい一歩です。

この絵本は、“いま居るところから勇気を出して一歩を踏み出すとき”に読むといい絵本だと思います。

絵本の作者は「『時間』への深い信頼と感謝がこの作品を書かせた」と述べていますが、それは「このくまとやまねこのように、悲しみを経験したら暫く休んで立ち止まっていてもいい。落ち込んでもいい、寝込んでもいい。でも暫く休んだら、つぎは新しく行動した方がきっとその先の人生は楽しいよ」ということなのかもしれません。

ときには一時休止をしながらも、一歩一歩少しずつでも前に進んでいけるような、そんな生き方をしたいですね。

これからも、子どもの感性を伸ばしてあげられるような、みなさんが癒されるような作品をピックアップしていきます。

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